車僧(くるまぞう)
一昨日研究会で車僧がありました。シテは角幸二郎氏が病気のため岡久広氏が代役を勤めました。
車(作り物)に乗って西山の麓に赴いた車僧(ワキ)の前に山伏太郎坊(前シテ)が現れ、禅問答をします。その後凄まじい空になり、山伏は黒雲に乗って消え去ります。(中入り)
太郎坊に仕えるアイ狂言の溝超天狗(みぞこえてんぐ)がワキをおちょくりますが、まるで相手にしてくれません。
その後天狗の太郎坊(後シテ)が登場します。天狗は行力比べを仕掛け、車増に戦いを挑みますが、車増の力に屈服します。
傲慢な天狗が魔道へ誘惑しようと企てた滑稽さが、喜劇とも言える曲目です。
50分ぐらいの小曲で、割と若者が勤めることが多いのですが、天狗の威厳や存在感はかなりの技量を必要とします。演じ方によっては滑稽になってしまいがちになります。
私は内弟子中に勤めさせていただきましたが、その時は無我夢中でした。こういう曲はそれでいいと思っていました。
先日の岡氏の車増はそれを払拭させられたおもいがしました。非常な存在感に圧倒され、60代とは思えない体のキレに重ねて感動しました。能は深い!日頃の精進が舞台に表れるのだとのおもいを新たにしました。
積み重ねが大事です。食い入るように拝見しました。自分もいつかまた勤めてみたくなりました。