敦盛について
敦盛で有名なのは、織田信長が本能寺で最期に謡ったとされる 人生五十年云々ですが、これは幸若舞といわれるものの中にある詞章で、能の敦盛にはりません。いずれにしても敦盛は悲劇の主人公として昔から有名な平家の公達です。
まだ16歳。青葉の笛を吹く、戦とは全く関われない若者が熊谷直実と勇敢にたたかい、一の谷の合戦で討たれます。
熊谷はその後出家して、連生法師となり、敦盛の菩提を弔います。
平経盛の三男として悲劇の運命をたどる敦盛と、第二次世界大戦以後の日本とだぶって見えます。平家に非ずは人に非ずといわれた言葉が戦前の日本、現在の日本と似ている気がします。
祇園精舎の鐘の声諸行無常の響きあり 平家物語の冒頭の言葉が今の日本にもいえるかもしれません。非常に重く聞こえます。
能では最後の方で敦盛が連生に討っていこうとしますが、弔う連生を死後は友だと言う型があります。以前テレビでイラクの人が敦盛のビデオを見て、そのシーンをイラクで見せているということでした。日本には神仏一体という考えがあります。日本人の持っている宗教を超えた友好の精神を是非世界の人たちに広めるべきだと思います。能には素晴らしい精神を秘めた日本の芸術だと自負しております。この能を子供たちに少しでも知ってもらいたいと思っています。敦盛というと、このことをいつも感じます。