西王母
21日に西王母のツレを勤めます。前ツレと後ツレとありますが、今度は前ツレです。後は二回勤めておりますが、前は初めてです。唐織のいでたちで桃の枝を持ち、シテとの連吟があります。動きはこれといってありません。
さて西王母の話ですが、古くから中国で信仰されている仏女で、周の穆王(ぼくおう)が西に巡幸したとき、崑崙山(こんろんざん)で西王母に逢って帰るのを忘れたと伝えられ、この曲も西王母が王に仙桃を献ずることから作られています。また漢の武帝の時代に西王母が天上から7つの仙桃を持って下り、5個を捧げました。武帝は食べてあまりのおいしさに、種を蒔いてならせようとしたら、西王母は 3千年に1度しかならない桃なのですぐにはなりませんといわれたという話があります。その時武帝に仕えていた東方朔(とうぼうさく)がその桃を3個盗み食いし、8千歳の長寿を保ちました。能の東方朔ではもともと仙人でしたが、天上で西王母の桃を食べた罪により、この世に下されて人間として武帝に仕えましたが、やがて西王母と一緒に天に上がったとされたという話から作られています。とにかく美味しかったのでしょうね。
曲は一畳台が舞台の地謡の方に置かれ(宮廷の態)始まります。周の穆王に仕える官人(狂言)が登場し太平の世を寿ぎ、御殿での宴があることを宣言し退場します。狂言口開(きょうげんくちあけ)といい、鶴亀などおめでたい曲に用いられる演出です。そこへワキ帝王が臣下を従え登場し、一畳台に座します。そのあとシテ(西王母の化身)が侍女(ツレ)と登場し穆王の徳を讃えます。シテは3千年に1度咲く桃の花が咲いたのでそれを献上すると帝にいいます。その後自分は西王母の化身であることをほのめかし、実も捧げましょうといって消えます。(中入り)
この続きはまた明日にさせていただきます。今日はこれから長野の坂城に行ってきます。明日が観世会なので日帰りです。